「シィ、起きなさい!」

リーズの声に、シィと呼ばれた少女-…エルシア・レイネルは目を開いた。
窓の外からは、既に起き出した村人たちの生活の音が聞こえてきて、気持ちのいい目覚めだった。

もぞもぞとベッドから起き上がると、あくびをひとつ零してシィは立ち上がった。

 着替えを済ませ、外の井戸で顔を洗うと朝の空気を肺いっぱいに吸い込む。

シィの金髪が風にふわりと揺れ、慌ててシィは髪を纏めた。


シィが、レイネル家に置き去りにされてから、十年の月日が流れていた。
結局、シィを迎えに来ると言った女は姿を現さず、よくある捨て子だろうということでルードたちレイネル夫妻が養女として迎え入れた。

 誕生日も本名もわからないことから、ルードはエルシアという名前を与えた。
ルードとリーズは、シィを本当の娘のように可愛がり、愛していた。

シィも二人のことは大好きだったし、顔も思い出せない母親の事が恋しいわけではなかったが、それでも今の生活に満足していた。

 小さな村の生活は裕福なわけではなかったが、シィには十年前よりも以前の、この村に来る前の記憶がない。
この小さな村での生活が全てだったし、この生活が好きだった。


 年齢的には、17、8歳位に成長したシィは、今や美しい娘に成長していた。


 みすぼらしかった金髪も美しく伸び、キラキラと輝いていた。
空色の瞳は水面の様で、美しく澄んでいた。

当然、年頃の村の少年たちの人気者なのだが、ルード達はシィを一向に嫁に出そうとはしなかった。


 「母さん、これどこに置く?」

シィが、朝採りの野菜が入った籠を掲げると、リーズはキッチンの机に置くように言った。
シィがそこに籠を置くと、リーズがエプロンで手を拭きながら近寄ってきた。

「助かるわ、ありがとう」

「いいのよ」