五限の終わりを告げるチャイムが鳴り、俺はのそのそと屋上を出る。
教室に戻る途中で古典の教師に出くわして、グチグチと文句を言われたが半分も聞かずにスルー。
このオバサンは本当に怒りっぽい。
更年期障害なんじゃないかと密かに思っている。
教室に入ると、親友の神田ルキが一番に声を掛けてきた。
「またサボったの?そろそろ、古典の単位危ないんじゃない?」
二人で教室の窓に肘を掛け、グラウンドを覗く。
グラウンドには、体操着に着替えた生徒がちらほら出てきている。
こんな暑い日の最後の授業が外での体育なんて、まったくご苦労なことだ。
「お前こそ、そろそろ体育出席したら?今年も補修受ける気?」
ルキは体育にあまり出ない。
運動ができないわけじゃないのに、動くのが嫌いらしい。
「ちゃんと計算して休んでるから俺は大丈夫なの。」
カズとは違う、と余計な一言を付け足してニヤリと笑う。
「またなっちゃんに迷惑かけて…いい加減ちゃんとしないと、愛想尽かされちゃうよ。」
こいつは、時々母親みたいなことを言う。
だけどルキのこんな一面があるからこそ、入学してからずっと友達でいれてるのかもしれない。
ルキ以外に友達がいないわけではないが、親友と呼べるのはこいつだけだと思う。
俺の、ナツへの想いを知っているのもルキだけだ。