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同じ部屋に居ながら、お互いに言葉を交わすことも視線を絡ませることもなく、気付いたら窓の外はオレンジ色に染まっていた。


半日もこうやって何もせずに過ごせるものなんだなぁと思いながらも、何も言えない自分が、物凄くもどかしかった。


だけど、何を言っても結局彼を傷つけてしまうような気がしたんだ。


部屋の中が薄暗く感じるようになってきた頃、そんな沈黙を破るように彼が口を開いた。



「腹減らねぇ?」



思わず彼を見上げると、あたしが好きなやさしい笑みを浮かべていて、あたしの心臓はドキンッと大きな音をたてる。



「あんまり……」



だけどさっきの話があまりにも衝撃的すぎたからか、空腹感なんて微塵も感じなかった。


そんなあたしの言葉に、彼のやさしい笑みはすーっと消えて、その代わりに眉間にうっすらと皺を寄せた。


あたしがそんな表情をさせてしまったんだとは思ったけれど、嘘がつけないあたしはそれをフォローすることもできなかった。