あたしは一体、何の為にここにいるんだろう。

 今までは、自分の存在価値なんて考えたこともなかった。

 ただ、生きていくのに必死で。

 組織を抜けるまで、他のことは何も考えられなかった。

 ただひとつ考えるのは『失敗出来ない』そのことだけだった。

“失敗”イコール“死”。

 そんな世界でずっと生きてきたのだ。

 まるで機械――殺人兵器のように、組織の命令を遂行するだけ。

 そんな自分を“人間”らしくしてくれたのは、ある老人だった。


『雨は、好きかね?』


 そう聞かれたのが、老人との最初の出会いだった。

 だから、こんな雨の日は、思い出してしまう。