「必要なかったって…」

「ジジイの店のプログラムを起動させる鍵だったの。だから、あたし達には必要なかった」


 ユイは、その小さな鍵を見つめた。


「いらないかな~、とも思ったけどね」

「…ううん。ありがとう」


 ユイはそれを首にかけた。


「今の夢のような時間も、こうして生きていることも…夢のままで終わらないように、この鍵を見て思い出すわ」


 みんなは笑う。


「カクテルのおかわりはいかがですか?」


 リーがトレーを持ってきた。


「はいはいはい~! あたしもらう~!」


 立ち上がり、ミサトはカクテルを手に取る。


「飲みすぎだ」


 レンが呆れて言った。

 ミサトはいつの間にか、その手にカメラを抱えていて。


「ほらほら、みんな笑って!」


 エイジとレン、ユイは顔を見合わせる。


「早くこっち向いてよ」

「何言ってんだ?」


 エイジが言った。

 ミサトは首を傾げる。


「早く来いよ」


 レンが、自分の隣をぽんぽん、と叩いた。


「ね、シャッター、お願いできるかしら?」


 ユイはリーに声をかける。

 喜んで、とリーはミサトからカメラを受け取った。


「………」


 ぽりぽりと頭を掻いて、ミサトはみんなのそばに座った。

 ユイとレン、エイジに囲まれて、カメラのレンズを見つめる。


「…もう少し笑ったほうが…」


 ファインダーを覗き、リーは苦笑した。

 四人は顔を見合わせて。


「…出会えて、本当によかった」


 ミサトが言った。

 それからずっと、ユイのデスクには、四人が笑顔で写っている写真が飾られていた――。










【END】