「…さァて」


 レンはツァンダオを睨み付ける。


「テメェらのボスは死んだ。部下なら部下らしく、後を追うか?」


 もはやツァンダオに戦闘意欲はなかった。

 ロンがいなくなった今、どこにともなく姿を消す。


「…母さん…!!」


 ユイは倒れたままのインホアに駆け寄る。


「ユイ…」

「しっかりして…っ」


 その身体を抱き起こし、ユイははっとした。

 左胸のあたりから、おびただしい出血。


「ユイ…よかった…」


 インホアは、ユイの腕の中で、微かに微笑んだ。

 エイジとレン、それにミサトも、二人の傍らにたたずんでいる。


「私を…許してね…」

「もういい…もういいから、喋らないで」


 ユイは必死に、インホアの胸の辺りを押さえている。

 その指の間からも、どんどん血が流れる。


「…最後を見届けられて…本当によかった…ありがとう、あなた達…」


 ミサト達の方へインホアは視線を送る。


「ごめんなさ…ユイ…」


 インホアは、ゆっくりと目を閉じた。

 その頬に、涙が伝う。

 エイジは後ろを向くと、タバコに火を点けた。

 レンはじっとその光景を見据え、ミサトは、へなへなとその場に座り込んだ――。