「センチメンタルな感情なんざ、テメェにゃ全く似合わねェな」

「てんめェ…」


 出来ることならしばきたおしてやりたかったが、レンは椅子をもう一つ無造作に床に下ろし、どかっと座る。

 そして、ジーンズの後のポケットから、一枚の紙を取り出した。


「とりあえず、呼び出されたこの住所に行くしかねェだろ」


 隠れ家に来た手紙に書いてあった住所は、このダウンタウンから車で一時間くらい行った山の中だった。


「ちょっと待てよ」


 エイジは静かに、レンを止める。


「…例え罠だろうがなんだろうが、俺は行くぜ」

「待てっつってんだろ」

「なんでテメェはそんなに慎重なんだよ? ここまで来て怖気づいた、なんてことは言わねェよな?」


 いつもなら、こんなに慎重に行動することはない。

 まずは動いて、結果はそのあとについてくるものなのに。

 エイジは黙ったまま、レンゾから手紙を取り上げてそれ をじっと見つめる。