「しかし、君も無茶なことを…まさか一人で敵地に乗り込むとはね」


 明らかに嘲る口調で。


「無茶は時には、無謀とも言える。先のことを考えて行動しないと、この世界では命を落とすことになりかねない」

「そんなことは判ってる。だけど、そうせずにはいられなかった…!!」

「君はいつから、そんなに感情的になったんだね? 昔の君は、もっと冷静で優秀な人間だった」

「そんなことはどうでもいい」


 ユイは、強い口調で言葉を遮る。


「…母さんは、どこ!?」

「あの女は、まだまだ使える駒だよ。実に忠実な駒だ」

「……!!」


 ガチャガチャ、と金属の音がする。

 どんなに暴れても 、両手の鎖は虚しく音を立てるだけだった。