「俺も一回しか来たことねェんだよ…その時は、 あいつは瀕死の状態でな」

「…あァ、いつか聞いた話か」

「あの時あいつは、生きたいと思った、ってさ」


 言いながら、エイジは壁の一部に触れる。

 すると、ゆっくりと壁が動いた。


「ミサト、こっちだ」

「なんだそんな場所に?」


 パタパタとミサトは戻ってきて、壁の中に現われた階段を降りた。

 後ろ手に扉を閉め、エイジとレンも歩を進める。


「この家の構造も知らねェのか、あいつは」

「俺が運んできた時ゃ、意識はなかったからな」

「………」

「どうした?」

「…いや、別に」


 どことなく仏頂面のレンを、エイジは見つめた。

 その心中を想像して、ニヤリと笑う。