「…ばさん、千葉さん。」
グダグダ準備していた澄香の頭にポンッと楽譜が渡される。
「はい、いつもの。」
「あ。ありがとうございます。」
ふわりと顧問が笑って去っていく後ろ姿を見つめ、澄香はその楽譜もカバンにそっと直した。
「わー澄香も熱心だね。」
「え?違う違う、私ヘタ過ぎるから。」
うへーっとげんりしながら胡桃が天井を見た。
「私もヘタだけど、そんなに練習する気にはなれないわー。うん。だから、えらいよ!澄香。」
いや、胡桃は上手いのだ。
その性格と同じ性質の声はまっすぐで自信に満ちてとても魅力的である。


