恋とくまとばんそうこう


「ふぅ…」


放課後。

前の席から聞こえた何気ないため息。

いつも女の子がくっついていた彼からもれた、安堵にも似た響き。

帰宅…、というか部活に行くため机の上を片付け始めた彼が不意に剃りたての頭をポリポリ掻いた。

自分で剃ったのか、後ろの方は所々虎刈りになっていて、しかも傷みたいなのもあり、耳の後ろに真新しいかさぶたが出来ている。

澄香も自分の机を片付けながらなんとなくそのまるっとした頭部を眺めていた。

ガリっ

すると、ふと彼の爪がそのかさぶたをかすり、

ポロッと外れた。

「!」

うわっ!

傷からは、つつつと細くて赤い血が流れはじめている。

彼は気付いていないのか、またカバンの中に教科書を突っ込みはじめた。