こんな失恋間近の状況でも、ドキリとしてしまう自分に嫌気がさす。
澄香は出来るだけ笑って済まそうと涙を流さないように目頭に力を入れた。
「その…、よく聞こえるんだ。」
「うん。」
「この前の練習試合も、…いただろう?」
「うん。」
そうだそうだ、わざわざ二人でグラウンドの隅まで見に行ったのだ。
胡桃と二人で。
「それに、…残ってよく一人で練習してるだろ。歌。」
「…うん?」
いや、それは私だけど。と澄香は少し首を傾げた。
「あの、残ってよく下手な歌、歌ってるのは…それは私なんだけど…、」
胡桃じゃなくて、練習が必要な私なんだけど…。
「え?あ、うん。あれ千葉だろう?」
「え?うん。」
あれ?微妙に話が噛み合ってない。
「…ん?」
「……あーっもーーっくそ。」
更に首を傾げる澄香に、滝井くんは坊主頭をわしわしと照れくさそうにかいた。


