真横にたまたまあった手洗い台の鏡を滝井くんはぬっと覗き込んで自分の頬を確認する。
「………。」
「…あっ!えっと……ごめん。…今それしかなくて…。」
あー…。
また、やってしまった…。
何しているの私、と澄香は胸の中で頭を抱える。
今更ながらに気が付いてしまった。
絵柄のチョイスが、おかしい。
凛々しいはずの彼の頬に張り付いた、可愛らしいクマ柄のファンシー絆創膏に、ミスマッチという言葉以外に、澄香は思い当たらなかった。
「…。」
まだ鏡を覗き込んだまま微動だにしない彼に、澄香は更に右往左往する。
「や、本当にごめん。も、持ち合わせがそれしか…」
口が、勝手に動いた。
彼とこんなに喋ったのも、初めてかもしれない。
「…ふっ。」
突然、我慢が堪えきれないように肩を震わせて滝井くんが笑う。
わ、
笑った…っ。
あの滝井くんが…っ!
澄香は貴重な彼の笑顔に、内心大興奮しながら固まってしまった。


