紅蓮の姫

「思い出したのは、先日の満月だった夜……あの日も、満月だったんだよね」

全てを忘れる、きっかけになった夜

私達の腕に、この傷が付いた日




「鈴。傷見せてくれないか」

「うん…」

言われると思った。

だから、いつもしてるテープを今日はずっと外したまま。


そっと腕を捲る



見せたくない。
だって、私の傷はもう――


「…だいぶ小さくなったな」



カズの顔が見れない。


同じ日に、対に出来た同じ傷

なのに、カズの傷とはもう違う。


年々治っていく傷は、隠すテープを小さくしても大丈夫な程に。