お父さんの仕事の都合で去年の冬、転勤になって、せっかく高校入って慣れてきたというのに、転校させるのは可哀相だと、あたしを残して行った。
兄も成人していて、仕事が忙しく、週に一回しか家には帰ってこないけど、あたしが一人なのはどうしても心配だと言って、自分のアパートを引き払ってまで一緒に暮らしている。
「じゃあ、このまま直行な。涼介もいいだろ?」
「俺は構わないけど・・・椎名、本当に大丈夫なのか?」
無理をさせてるんじゃないかという、和泉先生の気持ちが伝わってきて、ここで断るのは勿体無い気がした。
「・・・はい、大丈夫です」
せっかく一緒にいられるんだ・・・緊張するけど、今井先生もいるから大丈夫。
あたしは笑顔で答えた。
そして暫くしてお店に着くと、制服は目立つと言われ、今井先生の奥さんが丁度置いてあった、私服に着替えさせられた。
そのお店はとても高級そうな外壁で、制服やデニム、Tシャツなんかでは絶対に入れないような雰囲気だった。
あたしはドキドキしていたけど、先生たちの跡を追って入って行った。
「いらっしゃいませ」
