「今日注意されたけど、和泉先生に名前呼ばれて嬉しかったな」
休み時間に入り、真海はうっとりしながらそう言った。
「もう毎回何をしようか迷うけど、呼んでもらった時は最高」
そして続けて沙絵子もそう口にする。
だけどあたしはそれを聞いているだけで、自分は一度も呼ばれた事がなかった。
それはもちろん、先生の授業になれば先生の後ろ姿に目を奪われて先生から見れば真面目に授業を受けているように見えるからだった。
「名前呼ばれただけでもその日幸せな気分になれるよね」
「だってこれだけ生徒がいれば、なかなか呼ばれないしね。みんなあらゆる手段を使って、先生に声をかけてもらおうとしてるんだもん」
真海も沙絵子もいつも休み時間はそれで盛り上がる。だけどあたしだけはその会話についていけなかった。
一緒にみんなとそういう話をしたいと思っていても
自分のはみんなのようにお遊びじゃないからだ。
それにみんながお遊びで先生に声をかけられていても、自分だけは違った形で名前を呼んでもらいたい・・・そう思ってきた。
