本当は頼みづらかったのもあるけど、先生に会いたかったんだ。ひと目だけでも会いたかった。
だから来たんだよ?
なんて言えないけど・・・
「じゃあ失礼します」
少し名残惜しい気持ちもあるけど、今日も旧音楽室で2人きりになれるからと思って先生に背中を向けた。
先生もドアを閉めようとすると、突然女の子2人が先生の元へとやってきた。
「和泉先生っ」
その子たちは学校内でも一番可愛いと噂されている先輩だった。あたしは先生たちから少しずつ離れていく。
「いやだぁー、先生ってばぁーーー」
あたしは先輩が大きな声を出した事にビックリして、立ち止まり、振り返った。
すると先生が先輩に向ける笑顔を見て、心の中でモヤモヤするのをなんとなく感じた。
楽しそうに笑い合って、優しい表情・・・
何だか見るのが嫌になって、あたしはその場を駆けだした。
何だろう?この気持ち・・・
片想いで苦しいという気持ちではなく、少しだけ苛立ちにも似た気持ち・・・
初めて経験する気持ちにあたしは怖くなった。