でも、去年の春・・・美咲と出逢ってから、美咲にだけは自分から歩み寄って行った。


恋愛の感情なんかは一切ないけれど、優希の中で放っておけない存在だった。

「あいつさ、何でも一生懸命で赤くなったり、青ざめたりで忙しい奴なんだよ」

まるで自分の子供の話をするかのように、優希は楽しそうに話していた。

「消極的で素直で・・・・ほっとけねないんだけど・・・どこか芯は強いんだよな」

「・・・・・・知ってる」

優希の言葉に同意するかのように、涼介も微笑んだ。その表情を優希は見逃さなかった。


「・・・なぁ、お前だってずっと気になってたんだろ?俺とは違う特別な感情で・・・だからこの部屋に入れたんじゃねーの?」

旧音楽室は使われなくなってから、誰一人と近づこうとはしなかった。涼介が貸しきるようになって、たまに優希が顔を出すだけで、生徒が偶然見つけたとしても涼介は絶対に入れなかったのだ。


「・・・・・・いつも俺の授業の時さ・・・・他の奴はサボってばっかりなのに、椎名だけは後ろで必死で聞いてんの。たまに赤くなったり、友達にからかわれたり・・・可愛い奴だなってずっと思ってたよ」