涼介と優希は同期で、教師だけの付き合いじゃなく、学生からの付き合いだった。他の教師や生徒がたくさんいる中では絶対に名前では呼ばないけれど、特定の人物の前だけは名前で呼び合っていたりする。
「お前、毎日生徒ここに連れ込んでるだろ?」
ニヤニヤとからかうように優希は涼介に言った。
「人が無理矢理連れ込んでるみたいに言うなよ」
まったく慌てる様子もなく、さらりと涼介はかわした。
「そりゃー悪かったな。椎名は俺の可愛い教え子でもあるからな」
「知ってる。生徒に全然構わないお前が、椎名だけには違ってただろ」
優希は既婚してるからと言って、生徒を構わないわけではない。特に女子生徒には一線を置かなければといつも意識をしていた。絵に描いたような容姿を持っているために、学生時代も女だけのいざこざが頻繁にあり、そういう争いだけにはうんざりしていた。だから今の妻と会うまでは誰も特別扱いもしなかったし、自分に好意を持っていると分かれば尚更だ。
けれど、妻だけには自分のペースを狂わされ、愛しい存在に変わって卒業してから結婚という形になったけど、それからはまた同じ日々を過ごしていた。
