「美咲は和泉先生の事が好きなんでしょ?」

そんなはっきりと口にされると思ってなかったあたしは
思わず立ち上がり、椅子の動く音が大きく響いた。
クラス中の生徒に注目され、先生もあたしの方に振り返った。


「・・・・・どうした?椎名」

沙絵子は満足そうに微笑んで、あたしの変わりに先生に言った。

「すいませーん、あたしが美咲を隣りで苛めてました」

あたしは硬直していて、中々座る事が出来ない。
そして、先生の顔がまともに見れなかった。

「北川・・・椎名の邪魔をするな。邪魔をするんだったら他の奴に教科書見せてもらえ」


「はーい、もう邪魔しませーん」

先生は呆れたように溜息を付き、沙絵子はあたしの硬直している体を強引に引っ張り
あたしを無理矢理座らせた。


「・・・・良かったね、美咲」

そう、これが沙絵子の作戦だった。
名前を呼んでくれた事は嬉しかったけど
恥ずかしくて、穴に入りたいくらいだった。