「これ、どうですか?」
どの位時間がたっただろう?
気がつけば、外が暗くなっていた。
私の声に、奥から要さんが「どれ?」と言いながら出てきた。
その後ろにはご主人もいる。
「この丸い文字盤の――」
「あぁ。きっと似合うよ坂巻君に」
ガラガラっとショーケースのガラスを開けて取り出してくれるご主人から時計を受け取って、左手に付ける要さん。
その時計は、不思議と以前から要さんの腕にはめられていたように感じる。
「三島、ありがとう。じゃあ、これお願いします」
「えっ?本当にいいんですか?他にも見なくていいんですか?」
あまりに早い決断に、私の方が焦る。

