幸せの選択

「嫌なわけないよ。俺は三島に俺の全てを知ってもらいたい。

だけど、これからする話を始めにすると、お前が困ると思って今までしなかったんだ」



柔らかく微笑んで、私の頭を優しく撫でてから静かに要さんは語り始めた。






「いつ、どこで生まれたのか、親はどんなだったのか…俺の生まれに関する真実は、何一つ分からないんだ。

俺は、産まれてすぐにこの丘の麓にある教会に捨てられていた。だから、親の顔も、声も、抱かれた記憶もない。


教会のドアのそばにへその緒がついたままタオルにくるまれて泣いていたらしい。発見が早かったから今の俺があるけど、タイミングが悪ければ今の俺はいない」





「あそこだよ」と指さす先には、ちいさな教会があった。