幸せの選択

佐々木さんは、長年務めた会社を早期退職してこのお店を開くことにしたそうだ。




もともと、佐々木さんのお父様がこの店で長年喫茶店をされていたけれど、佐々木さんが継ぐ気がないと10年前に閉店したけれど、定年前にいろいろ考えてこの場所でもう一度喫茶店を始めることにしたんだと言っていた。




「僕はね、実はコーヒーが嫌いだったんだ。子供のころから家中いつもこの匂いがしてね。
だけど、年を取ると昔のことが嫌だった記憶も含めて懐かしくていとおしく思えて来てね。それで、一念発起したんだよ」



手元の作業を止めずに話す佐々木さんは、注ぐお湯をとても楽しそうに眺めている。