幸せの選択

不意に背後から声がする。
低くて冷たい感情のこもっていない機械音のような声


でも、その声は私を震え上がらせるには十分だった
足元からゾクゾクと込み上げてくる震えに、立っていることもままならなくなる。



「俺を置いて出て行くの?なんで?」


二言目は、さっきとは逆の感情をむき出しにしたナイフのように鋭く私に向けられた




ジリジリと追い詰められていく。
後ずさる私を簡単に追い詰めた弘之の目は、私を突き抜けずっとその先を見つめている


「千秋?何とか言ってよ」


「弘之……私たちもう……」


恐怖で声がしっかり出ない。
「終わりにしよう」と伝えたいのに、喉に何かが詰まったように上手く声が出せない。