いきなり話し出したと思えば好きな人いた?そんなんなんだっての。
あたしが黙ったままでいると東條は遠くを見ながら口を開いた。
「僕が初めて好きになったコは小学校6年生の頃でさ。
今思えばゆきなに少し似てるところがあったかも。そのコは
椎名智帆って言うんだけど僕の1個上で中学1年だったんだ。
でも全然そんな風に見えなくて。ちょっとしたことから
好きになったんだけど、やっぱり長続きしなかった」
冬の寒い空気があたしたちの周りを取り囲むようにして
更に冷たくなっていく。学校サボってまでこんな奴の話
きいたりする必要あるのかな。そう思いながらもあたしは
東條の話を聞くことに集中している。
「今はもう他の県に引っ越したから会うことは無いんだ。
会いたくても会えない。向こうがどう思ってくれてるかは
わからないけど、でもゆきなに会えたから僕は嬉しいんだ」
決して東條の顔を見ない様にあたしは視線を足元に向ける。
「ゆきなは何もわからない?」
「何が?」
そう訊けば東條は残念そうに声を落す。
「そっか。僕はわかってたよ。ゆきなだってこと」
ますますわけのわからない言葉にあたしは混乱する。
こいつは何が言いたいわけ?
わかる、わからないじゃ何もわからない。まず、何の話を
しているのか。それすらもわからないのにどう
答えろってんだよ。
「僕が初めて恋した女の子はゆきなだってこと」
「・・・は?」
意味不明な言葉を残して東條はその場から立ち上がり、
「戻ろっか。」
差し出された手をつかむことに躊躇したまま。
