ふと、レヴェンテの手に大事そうに抱えられた、スケッチブックが目に入る。
使い古されたもののようだが、本当に大事にされているのだろう。
形容しがたいが、伝わってきた。

「レヴェンテ、絵を描くのか?」

亮一郎は抱えられたスケッチブックを指差しながら、レヴェンテに聞いてみた。
すると少し恥ずかしそうにしながら、彼は「はい。」とだけ答える。

どうして恥ずかしそうにするのだろう。
胸を張って描くと言えばいいのに。

亮一郎は絵が究極に苦手なので、描こうという意思があるだけでもすごいと思っていた。

「リョウイチロー、レヴェンテ、結構上手いんだ。」

何故か自慢げにセードルフが言う。
どうやら、以前に描いてもらった自身の絵が、相当お気に入りらしい。


「これ、父の形見なんです。」


ああ、だから大事そうに抱えていたのか。