「トレンチーン・・・チェイテ・・・」
「そう。マジャールのトレンチーン群、チェイテ村。」
それからここには大学があるんだと、少し下のナジソンバトを差した。

「マジャールって国なのか?」

聞いたことも無い国の名前だと、ずっと気になっていた。


「ああ。外国人達は、ハンガリーって呼ぶらしいけどね。」
「ハンガリー?!」


驚いたのは、亮一郎だけではない。
そんなに声を荒げる事なのかと、セードルフは目を丸くしている。
普段冷静に見える亮一郎の目が、揺れていた。

「ハンガリー・・・マジャール・・・」

覚えていたのが、まさかハンガリー語だなどとは、思ってもみなかった。
地図を穴が開きそうなほど凝視しながら、亮一郎は頭の中で世界地図を広げる。
ハンガリーと聞けば、国の場所はだいたい記憶しているから、セードルフに教えてもらった現在地と照らし合わせると、自分が今ユーラシア大陸のどのあたりに居るのかが分かった。