来客用の部屋のドアを開け、部屋の中へと招きいれられる。
緊張したが、牧師が隣に居るのだから、言葉が通じなくてもきっと大丈夫だろう。

『リョウイチロー。君に会いたいと言っている人が居る。』

牧師がエメシェには分からないラテン語で話しかけると、ベッドの上の毛布の塊が動いた。
『はい。』
塊は起き上がり、目を開けた。

黒髪、黒い目の東洋人の少年は、ベッドの上から降りて、姿勢よく立つ。
朝発見した時は目を閉じていたから分からなかったが、とてもきれいな黒い目だ。
『君を助けた、エメシェだ。』
『俺を助けた・・・』
教会前で倒れていたのを、ある姉弟が助けてくれたのだとは聞いていたので、亮一郎は牧師の後ろにたたずむ少女がそれだと分かり、頭を深く下げた。