亮一郎は、知りうる限りのラテン語で、何とか牧師に今までの事を話した。

祖父の家から、突然ここに来たこと。

きっかけは、大きな鳥かごに触れた事。

鳥かごには、1610年・チェイテ城と書いてあった事。

にわかに信じがたい話だと、笑われるかと思ったが、牧師は最後まできちんと聞いてくれた。
彼を信じても良いのかは疑問が残っていたが、それ以外に今自分に頼れる人はいない。
帰り方も分からない。
ただ、今、生きているという事だけが、亮一郎の事実。

『君は・・・未来から、来たと・・・』
『・・・はい。そうだと、思います。』

話しているうちに、ラテン語会話にも慣れてきた。