冷えた空気に触れた肌は赤くなり、薄い、申し訳程度の手袋の下の手は、あかぎれで、安い繊維を引っ掛ける。

その痛みをこらえながら、牧師は長い山道を越え、山頂付近のチェイテ城へとたどり着いた。

古い城だ。
何代も受け継がれた石垣が、その古さを教えてくれる。

門番に身分を告げて門をくぐると、城内は異様な空気に包まれていた。

冬なのに、どこか生臭い。
それに微かに鉄の臭いが混じる。

待ち構えていたように、すぐに使者が現れ、牧師を伴って城内を無言で案内する。

忙しく動き回る城勤めの者達も、すれ違っても挨拶をせず、目すら合わせない。

エルジェーベトはオーストリアの身分の高い貴族の出。
低い身分の者への対応も、これが普通なのかもしれない。

以前来たときもそうだったので、気にしないことにする。