牧師もこの噂は知っていた。
しかし、葬儀の話を持ちかけられたとき、流行病のためにではないのかと推測した。
隔絶された城で病に倒れ、ペンを持てずに亡くなってしまったのではないかと。
なので、牧師は葬儀を快く引き受け、それはいつ伺えばいいのかと尋ねると。


『麓の住民に流行病の事を知られると、混乱を招きかねない。

葬儀は夜、行うように。』


もっともらしいことを言い、使者は帰ってしまった。

流行病は確かに怖いが、情報を流すことも大切なのではないか。

内心少しおかしい所を感じながら、葬儀の支度をして、教会に残る二人にその旨と留守番を頼み、一人、冬の山道を歩いた。