レヴェンテに、紙と、絵具を。


そして何より、絵の学校に通わせてやりたい。


父の形見のスケッチブックを抱え、嬉しそうに亮一郎を描いたレヴェンテを見て、エメシェは静かに決意をしたのだ。

自分がこのまま弟と過ごしても、生活は何も変わらない。むしろ、苦しくなる一方だ。
それならば、自分は城にあがり、支払われる給金の全てを弟に託そう。
きっと、レヴェンテは学校に行ける。

姉である自分が出来るのは、そばに居て一緒に苦労する事ではなく、離れても楽
をさせてやる事ではないのか。


しかし、城の恐ろしい噂も聞いていた。
奉公にあがった若い女性達が、次々に流行り病に倒れ、亡くなっているという。


その噂はもちろん、セードルフも知っている。
だからセードルフはエメシェの決意を、どうしても笑って応援してやれそうにない。