「……何の真似だ、てめぇ」



 サタンは大きく開いた傷口に手を当てるも、深紅の鮮血は手のひらから溢れ落ちる。

 「どうなるか――」と、血飛沫を飛び散らせ、サタンはベリエルに掴みかかる。








「わかってんのか!! あぁ!?」









 そう言ったのと同時に、ありったけの怒りを込めた魔力を放出させた。

 その魔力は凄まじい殺気となり、ベリエルの上にとてつもない圧をかける。






――しかし。






 苦しみと憎しみに歪む彼を、無表情のべリアルはただ冷たく見下ろしていた。




「私が丸腰であなたに挑むとでも?」




「――なっ……」




 何かがベリエルを庇うように、サタンに重くのし掛かった。

 と、同時に彼のすべての魔力が封じられた。





その正体は、煌びやかに装飾された大鏡である。









「アバドンか! 何でてめぇがこんな――」













 憎悪と憤怒、そして全てが喪われ無になるこの感覚は――。