遠い昔――それは最古の人類が誕生するよりも、もっと遥か昔の話。






 天使たちの住む天界は、大天使ルシフェルによって支配されていた。




 ルシフェルは大凡天使とは似つかぬ、邪智暴虐な気性と禍々しい白い翼を持ち合わせ、天界の者達を恐怖で支配していた。




 だがやがて、天使達の中にルシフェルの邪悪な外見と内心に疑問を持つ者が現れ始めた。



 次第に天使達の間では、ルシフェルは天使になりすました悪魔である、という噂が囁かれ始めた。




 その噂には様々な尾びれが付き、やがてはついに、大天使長ミカエルの耳に入った。





 そして大天使長ミカエルは手下の上級天使たちを集め、命令した。






「堕とせ」






 堕ちるということ――それが意味するのは、大天使の位を剥奪され、天界を追放されるということである。