君から、私へ。 私から、君へ。

「ん?
どうした梨柘」

「…あの、ね、
実は……、」

「ん?」

「実…は………っ、」



たった2文字がなかなか言えなくてもどかしい。
だけど言えない。


…やっぱりやめておこうかな


「…。」

「…?梨柘ー?」


なかなか言い出さない私の顔を覗き込む麻緒。


…いや、言おう。
いつまでも先延ばしにしたってしかたがない。

女は度胸!
当たって砕けてみよう!

…砕けたくないけど。


「あのね、麻緒、」





口を開いた時だった。

小さな子供が勢いよくぶつかってきて、

突然のことに体を支えきれなく、麻緒にぶつかってしまう。


「おっ、…と」

「ご、ごめん!」

「へーきへーき!
チビも大丈夫か?」


そうだ、ぶつかってきた子は…


「おにいちゃんおねえちゃんごめんなさい!!

うん!だいじょーぶだよ!!」


…よかった


「ん、ならよかった。
気をつけろよ?」

「うん!ばいばい!!」


そう言ってまた元気に走り出す男の子。


「あいつ…また誰かにぶつかったりしないといいけどな」


と、笑う麻緒に続いて私も苦笑いをする。