え...?
私はゆっくりその手の方へ振り返る。
そこには男子高校生が立っていて...
「...俺買いますから」
再度店員さんにそう言ってお会計を済ませた。
「大根好きなんだね」と、その高校生は私におでんの入った袋を渡してきた。
「だ...いこんってか、お金!!ゴメンね!!財布を会社に忘れてきちゃって...ってか、これ...もらえないから、君が食べて!!」
「いらないよ。おねぇさんが食べて。俺大根好きじゃないから...」
「で...でもっ!!あ。だったら、明日お金払うから!!ね、それでいい??明日、時間ある?」
私はただ、社会人が高校生にお金で助けてもらうとか、奢ってもらうっていうのが複雑だった訳で...
なのに...
「...俺にまた逢いたい...とか?」
落ち着いた低い声が聞こえたと同時に...
彼の右手が私の左の頬をふわっと包み込む...
ゆっくり顔を上げれば、そこには頭1個分違う、高校生とは思えない綺麗な顔があって...
「...俺、奥原ケイ。明日、19時にここで待ってるから...」
彼...奥原君はそう言うと、そのまま帰っていった。
奥原君の真っ直ぐな視線に私は全く動く事も、声を出す事も出来ず...
ただ、彼の後姿を見つめるだけだった。

