爽やかなシトラスの香りが鼻をくすぐる。


チラッと右隣を見ると、奥原くんは目を瞑っていた。


その横顔に思わずドキッとする。


高校生とは思えない大人っぽさ。


ちょうど目の前をワイワイ騒ぎながら通り過ぎて行く男子高校生たちを見て、
余計に奥原くんが高校生に思えなかった。


友達はいるんだろうか・・・


体育とかで張り切ったり、先生に叱られたりするんだろうか・・・


これだけカッコよければきっとモテるだろう。


現に少し離れた所にいる女子高生は目をハートにしながら奥原くんを見ている。



彼女は・・・



彼女はいるのかな…?





「…なに?さっきから俺の顔をガン見してるけど。惚れちゃった?」




急にバチっと目があいて、ニヤっと笑われる。



「っな!そんなんじゃなくって!!」



思わず顔が赤くなるのがわかった。



「…じゃ、なに?」



「…ただ…奥原くん本当に高校生なのかなぁって思っただけ」



「ハハッ。制服着てるのにそんな事思ってたんだ?高校生だよ、普通の。ツレもいるし、勉強もしてるし…それに」



「それに?」



「…好きな女だっているよ」




ジッと見つめられてそんな事を言われて・・・


ドキッとした自分が情けない・・・。


自分に言われた訳じゃないのに・・・



「す、好きなコいるんだ?彼女??いいね、青春だね〜」



「残念ながら、彼女じゃないよ。ただ一方的に好きなだけ…」



「そっか…でも頑張って!奥原くんならいけるよ!」



「…だといいけど」


フッと笑って奥原くんは言った。



好きなコ・・・いるんだ。


いるよね、好きなコくらい・・・





なぜかわからないけど、少しだけ心がチクっとした。