「...テレビ観ててもよかったのに」
ふいに後ろから声が聞こえて振り返ると、スウェットに着替えた奥原くんがタオルで頭をガシガシしながら立っていた。
「あ..うん。でも会社戻らないといけないからゆっくりはできないし...ってか、シャワー浴びた?」
「うん。シャワー浴びたけど...もう会社戻るんだ?」
私はコーヒーをぐいっと飲み干した。
「ご馳走様。うん。上司に報告しなきゃいけないし...本屋寄って帰りたいから。」
「そっか。本屋に寄るって...わざわざ?」
「そう。私、結婚する事になったの。だから、結婚情報誌を買って彼に見せようかなぁって思って。だからそろそろ行くわね。」
「......」
「ちゃんと横になっててよ?熱高そうだし...」
そう言って奥原くんの横を通り過ぎようとしたらグイっと腕を掴まれた。
「...送ってく...駅まで」
「えっ...?何言ってんの...いいよ、そんなの。玄関でいいから...」
「嫌だ。送ってく...」
タオルを頭にのせたままで俯いてるから奥原くんの表情はみえないけど、私の腕を掴む手に力が入る。
「...そんなのいいから。とにかく寝てなさい。ね、手離して?」
私のその言葉で顔を上げた奥原くんはとても切なげで・・・
「...じゃぁさ、和歌さん。和歌さんの連絡先教えてくんない?じゃないと、手離さない。」
「なっ...なにそ...れ...」
まただ・・・
また、奥原くんの色気を帯びた視線にドキっとした・・・
“一人にしないで”って言いたそうな目・・・
「...ね、和歌さん。お願い...連絡先教えて?」
私はなぜだかこの目に逆らえない・・・
「...わかったから...連絡先教えるから...」

