・・・思わずドキッとした。
前髪が顔に張り付いて、熱が高いのかぼんやりした色気を帯びた視線で、“俺の家まで一緒に行って?”なんて甘えた声でそんなこと言うから・・・
まるで“一人にしないで”って言ってるみたいで・・・
「...送っていくだけ...だよ?」
なんだか奥原くんを一人にできなくてそう応えてしまった。
「アリガト、和歌さん。家こっちだから...」
「...うん」
奥原くんは傘の柄を私から奪い取って、私の腕を引く。
一緒の傘に入って私が濡れないように・・・
ふいに右に居る奥原くんの顔を見上げる。
水も滴るいい男・・・とはこういう事だとわかる。
高校生とは思えない雰囲気を醸し出して、マジマジ見ると本当に綺麗な顔・・・
雨に濡れたからか、制服から爽やかなシトラスの香りがする。
「...なに?見つめられると照れるんだけど...」
急に上からの視線とぶつかって、またドキっとした。
「べ、別に見つめてたわけじゃ...熱大丈夫かなぁって思っただけで...」
「...そっか。アリガト...」
なんなんだろ・・・この子は。
フッと笑うその顔も大人びている。
「家、すぐそこだから...」よ指差した方には5階建てのマンションがあった。

