「...待って。」




その声と同時に私の腕を掴む奥原くん。





「...え?」




掴まれた腕から奥原くんの顔に視線を移すと、やっぱり高校生とは思えない綺麗な大人びた顔。



奥原くんの真っ直ぐな視線に一瞬ドキっとした。





「ねぇ...名前教えて?」




「わ…たしの...?」




「そう。他に誰がいるの?」




「なんで...?」




「なんでも。いいから教えて。」








やっぱり。ただ単に年上の女を連れて歩きたい・・のかもしれない。


あわよくば・・・ってやつかもしれない。






「あのね、奥原くん。私、年下に興味ないの。それに彼氏いるし。そりゃぁ、昨日の件は助かったけど、だからって奥原くんと仲良くなろうとか思ってないの...ごめんね」




「っつか、年は関係なくない?助けてもらった相手に名前も教えないなんて、社会人としてありえないよね?」




「は?なにそれ...バカにしてる?ってか、手離してよ。彼氏に見られて誤解されても困るから。」




「別に?バカにはしてない。...で、名前は?早く言わないと彼氏に見られちゃうよ?」




そうだ。


なにも本名を名乗る必要はないんだ。




「わかった。名前くらい教える...ゆうこ... 「おぉ~い!和歌ぁ!何してんだよ~!」




奥原くんに“ゆうこ”とか適当な名前を言おうとした時に、少し離れたところにいたアツが私の名前を呼んだ。





「...ワカさんね。了解。」




掴んでいた手をゆっくり離すと奥原くんはニヤッと笑う。