私は君に恋をしました




次の日。


隣りにアツが居ない朝は、やっぱり淋しくて。

アツにおはようメールをしてから、簡単に支度を済ませて家を出た。



普段より30分早くに家を出たからか、いつも通勤で見かける人達の顔はなく、なんだか少し新鮮に感じる。


・・・にしても。
無一文で定期だけ持って会社に向かうのは心細い…



ホームに降りて、ふと反対側のホームに目をやる。



あ…




あの子…




奥原…くん?




うん。間違いなく昨日おでん代を立て替えてくれた奥原くんだ。



前髪が目にかかるくらいの少し長めのダークブラウンの髪。

ホリが深い訳ではないのにくっきりした綺麗な目…

中性的で、スタイルも良くて…

学ラン着てるから学生だとわかるけど、高校生とは思えない独特の雰囲気…




…あ…こっち気づくかな…


「っおく…は…」


思わず名前を呼んでしまいそうになったけど、今、彼の名前を呼んでもお金を返せる訳ではない…


ま、今夜返すんだし…

ただのおでん代を立て替えた年上女に名前呼ばれて知り合い面されても…困るだけだろう。




そうこうしているうちに向こうのホームに電車が到着し、私はその方向から視線を外した。


出発の音楽が鳴り、ゆっくり動きだした電車…


別に彼を見る為に視線を戻した訳じゃない。

たまたま見ただけ。


そのたまたま見た先に、彼…奥原くんがいて。


偶然にも視線がぶつかった。



奥原くんは視線を私から外さずに何かを私に向かって呟いた。