いちばん近くに -スナオになれない僕ら-


ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…!
バンッ!
「あっぶない!ギリギリセーフ!」
今日も寝坊して教室に駆け込んだ
バシッ
突然、後ろから固いもので叩かれた
「痛っ!なにすんのよ!…ってまたお前か!尚!」
キレるふりをして心臓の動きが加速した
「遅刻ですよ、水澤さん」
尚があたしを見下ろす
「うっそだぁ!絶対間に合ったね!」
尚に週番日誌で叩かれた部分が痛い
「直、駆け込みは素晴らしかったんだけど…」
親友の中谷鈴が気まずそうな顔で言う
「一分遅刻だった」
えぇー!
まさかの?
「残念でした」
尚の奴、ニヤニヤしやがって~!
「うるさい!一分くらいいいじゃん!」
「遅刻は遅刻だろ?今日、俺が週番だからちゃーんと書いといてやるよ」
尚が不敵な笑みを浮かべる
「チッ、ケチ!」
あたしは舌打ちをして尚を睨む
グイッ
「うわっ!」
尚が急にあたしの腕を引っ張った
顔をあげてみたら尚があたしの耳元に口を近づけている
ドキドキして混乱してしまう
く、唇近いよ…
「口の周りにチョコレートついてるけど朝っぱらからアイス?そんな暇あったら髪の毛でもちゃんとセットしたら?色気なしの直ちゃん?」
クスッと笑い尚は自分の席に座る
ムカつく!っていうより恥ずかしいー!
だってチョコレートアイスは美味しいじゃん!
朝とか夜とか関係なしに食べたくなっちゃうじゃん!
っていうよりクラスのみんなの視線が気になる…
みんなニヤニヤしながらこっちを見てるような…
「今日も朝からないしょ話?直ー」
鈴がみんなを代表してそんなことを言う
「なっ、ち、違うよ!」
あたしは口元を隠しつつ急いで席に着く
ガサゴソとカバンの中からミラーを探す
もう!よりによって尚に見られるなんて
最悪だ…
ってあれ?
チョコレートアイスついてなくない?
っていうか朝の洗顔は欠かさないあたし
急いで尚を睨む
尚はあたしに気づいて
(バーカ)
と口パクで言った
「ムカつく!」
あたしが叫ぶと
「水澤!静かにしろ!」
担任の先生が来ていて見事に名指しで注意された
クスクスとクラスのみんなが笑う
もう本当に今日は朝からついてない
あたし、水澤直は高校1年
実はこんなにアホキャラだけど成績は学年5番以内に入る
だってそれはアイツに負けたくないから
アイツこと藤堂尚はモテる
だってイケメンで成績が学年1位
それに付け足して1年にして入部早々サッカー部のエース的存在。
そんな人がいれば周りの女の子たちが放っておくわけがないんだ
けどあたしにとってアイツは天敵!
他の女の子たちには王子スマイルでニコニコしてるくせにあたしに対してはいつも意地悪ばっかりしてくるし、からかってくる。
上から目線だし生意気だし…ほんとに大っキライ!
になりたい…
いつもこっちばっかりドキドキさせてムカつく!
あたしだって尚をドキドキさせたい…
けど尚は一枚上手で、カッコいいからあたしがドキドキしちゃうんだ…
朝礼が終わり急いで尚の席に向かう
「ちょっと!チョコレートアイスなんてついてないじゃん!」
「あ、気づいちゃった?」
もう!最悪!
「このやろう!」
そう言ってあたしは尚にヘッドロックをかける
「直!ギブギブー!」
「嘘つけ!」
あたしは腕に力を込める
「おい!アホか!尚が酸欠死するぞ!」
隣から尚の親友の岸川俊が叫んでるけど
無視