わたしはその出来事を親に言わなかった。なぜか言えなかった。 そんなある日のことだった。体育の授業で50メートル走があった。 わたしは頑張って走ったけれど最下位だった。 またしてもあの色黒の男の子がみんなの前で叫び始めた。 「おまえもショウガイシャだから遅いんだろ!?」 みんなは笑った。 わたしはうつむいた。 色黒の男の子の名前は荻野という、お調子者だった。 わたしからは、人に嫌われたくなくて、自分がイジメの対象になりたくなくて必死でお調子者を装ってるように見えた。 可哀想な男の子。