それからのことを俺はあまり覚えていない。 ぼんやりしたまま、礼を言って ぼんやりしたまま、あずさと帰って ぼんやりしたまま、寝て ぼんやりしたまま、今の俺がいる。 本当に今も波に揺られているようで、あの曲の効力は長い。 カバンの中には昨日帰ってすぐさま洗ったらしい(ぼんやりしててあまり記憶にない)クリーム色のタオルが入っている。 今日も聞けるのだろうか。 あの奇跡みたいな音に。 今日も会えるだろうか。 無愛想な彼女の笑顔に。 *第一章 夏の始まり end*