何故…そんな悲しそうな顔を…
そう口を開こうとして、やめた。


ちらちらと雪が降り始めた。
手に乗せようと、手のひらを広げ、雪をすくってみる。


それは一瞬にして消えてしまった。



今の恭弥と、同じだ。
儚く、消えてしまいそうな笑顔に、わたしは声をかけることができなかった。



怖いんだ。
消えてしまうのが。



わたしも、恭弥の手をぎゅっと握り返す。



「…あったけぇ」



そう言った時の恭弥の顔は、いつも通りの顔で。



よかった、と思いつつも、さっきの表情は幻覚だったのではないのだろうかという錯覚まで起こってしまう。


スッとつないでいた手に暖かさが舞い戻る。