「そんじゃ、行くぞ」
「え、あの、行くって・・・・」
そう言いかけたとき、わたしの体がふわりと再び宙に浮く。
「しっかりつかまってろ。じゃないと・・・・」
そこまで言って、地面を蹴る。
「落ちるぜ?」
月光が彼をキラキラと輝かせて、見とれてしまう。
その時、ふと気づく。
この状況は、一体なんなんだ、と。
今わたしは彼にお姫様抱っこされながら、優雅に宙を舞っている。
でも、決して空を飛んでいるわけではない。
一定のリズムで、屋根やら屋上やらを蹴っては飛び、蹴っては飛び・・・の繰り返しだ。
「え・・・って、ふわあああ!!!」
今更驚く。
「うるっせえ・・・。耳元ででけぇ声出すな。反応おせぇ」
