秋の匂いで目が覚めた。 芳ばしいようでどこか悲しい空気があたりに立ち込めている。 人恋しいなんて想うのは人間だけの感情で此処に住まう者たちには無関係だ。 紫暮も例外ではない。 「紫暮様、お目覚めでございますか」 御簾の向こう側から青年の静かな声が掛かる。 「水を、お持ち致しました」 「ああ……此処へ…」 乾燥した空気のせいか、寝起きは喉が 乾いて声が上手くだせない。 青年の持つ水に手を伸ばし、体に流し込む。 秋の冷たい空気と、冷えた水が体に目覚めさせようとする。