カルタの庭で


「カイラこそどうなのかしら?」

「私は、今で十分ですわ。20を過ぎたら確実に、副長のジルと結婚させられる予定ですもの。」

本名、ジールミント・ミカルウタ・クライシス。

クライシス公爵。

彼女のいとこだ。

「クライシス公爵も美青年よね。硬派だし。でも」

言いにくそうに付け加える。

「それでいいの?」

カドミルタ王国は近隣の諸国では珍しく親の決めた相手に嫁ぐ必要はない。

流石に、王太子や、20を過ぎた王族の娘や

他国から、婚約の願いが来たら別だが。

もともと彼女自身、クライシス公爵のことは好きだった。

自分より、2つ年上で優しくて、自分の知らないことも知っている。

そんな存在なのだ。

でも、今は自分のほうが立場が上で今までどおりではない。

それが一番悲しかった。

「いいんです。ジルのこと嫌いじゃありませんもの。」

でも、クライシス公爵は違った。

ただ公爵というくらいにいながらも、王位継承権が3位にあたる彼女を手に入れたいだけなのだ。そのうえ彼女が手に入ればカルタ領も手に入る。

「カルラが、王位継承権があればよかったのですわ・・・。」

「仕方ないわ。ミューズ様は素敵な方だけど、陛下のお妾様だもの。」

正妃であり彼女の母親、セレネはミューズと協力して王である父フレデリック・カドミルタ・カドミルタルを、支えている。