「では、大丈夫でしょう。細かいことは、また伺います。」

「ああ。今度は連絡してくれ。私が迎えに行こう。」

セルムーン子爵は、ニッコリと笑うと彼を脅した。


「我が国に対して裏切りが発覚した暁には、トモラエル公国の大公一家、兵、役人は皆殺しですので、お忘れなきよう。」

「心得ておく。」

彼は、ニッコリ笑うと、セルムーン子爵に質問を始めた。

「それにしても、カドミルタ王国王家と親戚の君がなぜ、子爵なのかな?」

爵位の経緯を聞くのは、あまりいいことではない。少なくともトモラエル公国ではありえないことだ。セルムーン子爵は一瞬、顔をしかめたが、気を悪くしたわけではないらしい。その証拠に素直に質問に答えた。

「ホースカトレナに嫁いだ私の叔母、アンヌ様の母上つまり、私の祖母が王家のご出身で、我がセルムーン家は分家だからでございます。」

「なるほど。」

「しかし、トモラエル公国の公爵のお手伝いが無事果せられれば、爵位を上げることは可能です。」

セルムーン子爵の言葉に一瞬、彼は驚いた。

「想い人のためにも爵位を上げなくてはいけないのです。」

そんな彼に気付かず、セルムーン子爵は話を続けた。

「ほう・・・。想い人・・・。」

「\\\も、申し訳ありません。・・・お話しすぎました。何しろ王国で齢が近い男性がキール王子殿下しかいないものでして・・・。」

しかも、セルムーン子爵はそのキールに遊ばれているのだ・・・。

「構わない。君の想い人とは、カイラ嬢か?」

「まさか。とんでもございません。天と地がひっくり返っても、そんなことはないと誓います。」

セルムーン子爵の顔には恐怖が描かれていた。