月の輝く夜。

彼は一人で歩いていた。

トモラエル公国第3公子。

一夫多妻制の子の国で、正妻の子ではない彼、キリルレイドは、自由だった。

領地はとても小さく、親の住む宮殿から離れ、親のすねをかじりで小さな邸で暮らしている。

そんな、肩書きを張られていた。

しかし事実は違う。

王太子や親よりも賢く、政治の実権は争いを除きすべて彼が握っていた。

そのうえ、人懐っこく、笑うとえくぼのできる顔は端正で、黒い髪はどんな色にも染められないと有名だった。

「父上も兄上も正妃様もバカではないか・・・。カイラ嬢に戦いを挑んだところで我が国の今の兵力で勝てるわけがない。」

一人そうつぶやいた。

「シュライン公爵、よろしいですか。」

「君は?」

見かけない顔だった。

いくら兵力が劣るとはいえ、侵入者くらいなら捕まえることは朝飯前だ。

「ご相談があってまいりました。カドミルタ王国国王、フレデリック・カドミルタ・カドミルタルの使い、レオンハルト・セダルタ・セルムーンと申します。」

「、話を聞こう。」

「ありがたき幸せ。」

彼はセルムーン子爵を離れへと案内した。